2014年5月21日水曜日

PM (フィリップ モリス インターナショナル)再調査 その3


マガンハントの声がわずかにきびしさを加え、金属的になった。「きみはエキスパートだと思っていたんだが」 
「必要と認めたらエキスパートの意見を徴するのが本当のエキスパートなのだ」
ルイス・ケインのセリフ、ギャビン・ライアル著 菊池 光訳 『深夜プラス1』 ハヤカワ文庫 1976年 P71-72
前回の レビューで、PMは稼ぐパワーは強く、財務状況は短期的に問題ないものの経営の負債依存度が高まっていることがわかりました。このことから、どのような懸念が生じるでしょうか?
エキスパートではない他力本願な私としては、またもやエキスパートに意見を求めます。今回はBill Maurer氏(以下M氏)のブログ記事を参考にしました。

要約してみます。

M氏によると、PMは目下のところ財務的に危機に瀕しているとかは思っていないと丁重に断ったうえで:

Debt Ratio(Assetに占めるliabilitiesの割合)が増加している。これは長期的にみると問題になるかもしれない。なぜならばInterest Expense(金利負担)の増加を招き、それによってLess Profit、Less Cash Flowという結果をもたらす恐れがある。
そうなると自社株買いと増配当を支えるため、さらなるDebtに依存する羽目になる。結果、バランスシートが脆弱化し、それを嫌ってPMのCreditのRatingが引き下げられると、借り入れの金利上昇を招きInterest Expenseはさらに増加する。最終的に自社株買いと増配当に影響が出るのでは・・・
と述べています。(以下はAnnual ReportからInterest Expenseを抜粋してきました。四捨五入しています)
 


なるほど、Debt依存拡大による信用格下げと、それに伴う金利負担上昇が予想されるわけですね。M氏の記事に書かれているように、PMは2014年度も$6Bもの自社株買いをしそうです。一見すると、これは株主にとっては良いように見受けられますが・・・

ウーム、自社株買いと連続増配当による株主還元という宿命を負わされた企業の、無理に無理を重ねている現実が財務諸表を通して垣間見えたのかもしれない・・・ 

そういう宿命の(別の言い方をすると、株主に対してそれ以外のアピールポイントがない)企業が、もしもとうとう 自社株買いと増配当をファイナンスできなくなり株主の期待を裏切った時に何が起きるのか・・・株価に与える影響は大きなものになるかも知れないですね。

 さて、今回と過去複数回にわたってPMをレビューしてきました。 
材料は出揃いました。というか、これ以上やってもきりがありません。あとは自分のアタマで決断するのみです。それはまた次回。

情報開示:特になし

それにしてもこのアンケートで3位になっただけあって(といっても2票やけど)、PMに思い入れのある人は多そうですね。M氏のブログ記事のコメントを眺めていると、どこかの国の国債をめぐる論争を思い出します。

 

 

1 件のコメント:

  1. 参考になる記事を有難うございます。
    PMの配当目的でファンダメンタルを眺めていたところですが、同じように負債の大きさに目を張り、調べているうちにこちらのブログにたどり着きました(笑)
    今月23日が配当落ち日ですが、なんと1ドルの配当を発表しましたよね…
    シーゲル銘柄、増配ということもあって手堅い安定企業のイメージでしたが、B/Sを見る限り、私も長期で持つことはありません。今後が少し心配ですね。

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