2014年7月7日月曜日

"カーン機関"銘柄 KMB(キンバリークラーク)の分析

廊下は戦艦を思わせるグレーに塗られ、そこに監房のような小さなオフィスが連なっていた。彼のオフィスの天井には防音処置が施され、グレーのスチール製の机がひとつ、それに合わせた椅子が二つあった。グレーの台の上にグレーの口述録音機が置かれている。電話機とペンセットも壁や床と同色だった。壁には額に入った写真が二枚かかっていた。ひとつは軍服を着たカーンの写真で、憲兵隊のヘルメットをかぶっている。もうひとつは私服姿のカーンの写真だ。
レイモンド・チャンドラー著 『ロング・グッドバイ』 村上春樹訳 早川書房
 「カーン機関」は、上流階級のプロテクション専門のビヴァリー・ヒルズの興信所です。「タフでなければ・・・」のセリフで有名?な私立探偵フィリップ・マーロウが口を半開きにし、卒業したてのうぶな女学生みたいに息を詰まらせてしまうほどの美女、アイリーン・ウェイドの依頼を受けた際に、情報収集のため「カーン機関」のオフィスに勤める知人を訪問します。


高校時代に初めて清水俊二氏訳で『長いお別れ』を読んだとき、私は何故かこの何もかもグレーのオフィスに憧れてしまい(上記のほかにグレーのごみ箱と、グレーのリノリウムの床と、グレーのファイルとかが出てくる)、しばらく文房具等をグレーに揃えようとしていました。きっとタフになれると思ったんでしょう。馬鹿ですね。

それでキンバリークラーク(KMB)なんですが、Annual Reportが無味乾燥な全面グレーなんです。まったく、ボルトやナットを扱っているんじゃなくて一般消費財を扱っているんだから、もうちょっとカラフルでフレンドリーなReportの方がいいんじゃないかと思うのですが・・・まるで目を通してほしくないような素っ気なさです。タフでなければ読み通せません。もちろん私が読み通せるはずありません。

というわけで分かった範囲でまとめると・・・

1928年にデラウェア州で創業、 42年連続増配当中のティッシュやおむつ、生理用品等を扱う会社です。私がKMBの名を初めて知ったのはわりと最近で、ある人材紹介会社の知り合いからWound Careの会社に口があるんだけど・・・という話があった時に、その人が競合他社はキンバリークラークですねえ・・・と言っておりました。そのときは、なにそれ?って感じでした。

でもそのブランドはKleenex、Scott、Huggies等々世界的に有名で、これはさすがに私も昔から愛用してます。私がどこのメーカーのオムツを着用してたかまでは知らんけど。175か国以上でビジネスを展開し、うち80か国では少なくとも一分野でシェア#1か#2ブランドを持っているとのことです。ちなみに上記で挙げたヘルスケア部門(売り上げで約8%を占める)は、どうやらスピンオフされるようです。

ではRevenue。以下BS以外のグラフのソースはモーニングスターのサイトです。今回、カラーは、そのAnnual Reportに敬意を表しカーン機関バージョン。
じりじり伸びて、2009年にはじりっと下げてます。新興国の発展に期待が持てると言えば持てますが、中国のAPPや日本のユニ・チャームが黙っちゃいないようで、そうそうすんなり伸びていくのは厳しいかもしれないですね。
一株当たりの指標。
2011年のFree Cash Flowの低下は、減価償却費が高かったためのようです、たぶん。一時的なものですが、最近はPayout ratio高めではあります。
競合他社との比較。(PGはプロクターエンドギャンブル、ULはユニリーバ)
直近だと、ROEではKMBがPGをダブルスコアで引き離しております。比較的に紙関係だけに絞っているから効率いいのかな。PGの2006年の急降下はなんだろう?
2012と13のバランスシート。
5%程度縮小してます。ヘルスケアをスピンアウトしたらもっと小さくなるかな? キャッシュフローをみても2013年度は$3.8B稼いで、自社株買いと配当に$2.4Bを使っています。問題なし。

というわけで、カーン機関バージョンでやると、なぜか後ろ向き発言が多くなってしまいますが、結局のところKMBは連続増配当株式の定番銘柄で、今後の投資の有力銘柄です。あまり心躍る銘柄では、まあ、無いですけど。

情報開示:PG50株保有

 

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