2014年9月8日月曜日

コーヒーはアメリカンで - JMスマッカーの分析 -

「おやおや、警官にしちゃいやに傷つきやすいね」と私は言って、ガスの火の前に戻った。
「良い香りだ。どうやってそいつを作るんだ?」
私はコーヒーを注いだ。「フレンチ・ドリップ。粉は粗挽き。紙フィルターは使わない」、私は砂糖を戸棚から取り出し、冷蔵庫からクリームを出した。

レイモンド・チャンドラー 『さよなら、愛しい人』 村上春樹訳 ハヤカワ文庫

いまから20年ほど遡りますが、米国に留学していた私は、ある日ダンキンドーナツでドーナツとコーヒーを楽しみながら、Newsweek誌を読んでいました。
その号に『警官は我々を守ってくれるのか?』とかいうタイトルで特集記事があったのですが、その内容は、警官になるには厳しいフィジカルテスト(例、プッシュアップやシットアップを規定時間内にXX回とか、持久走を何分以内とか)をクリアすることが必要だが、一旦警官になった後のフォローアップがない・・・結果ドーナツを食いすぎたケツのでっかい肥満警官がはびこっている・・・こんなんで市民を守れるのか、というものでした。

ふーんと思いながら目をあげると、居ましたね、店の隅のテーブルに陣取ったケツのでかい警官たち(女性含む) が、ドーナツ片手にくっちゃべっておりました。私はあやうく飲んでいたコーヒーを吹き出すとこでしたよ、まったく。

米国ではドーナツ店におデブな警官がのっそりと暇そうにたむろしているのをよく見かけます。日本と違い、かの国では警官が制服のままレストランで平気でメシ食ってます。彼らがドーナツ店を好むのは、一説によると緊急発動の際にほったらかしても惜しくないから、らしいのですが本当でしょうか。最近の米国での警官の食事事情はどうなのでしょう。
Cops in a Doughnut Shop 2011 Shankbone
by david_shankbone
それでそのダンキンドーナツ・コーヒーを提供するJMスマッカー(SJM)。品質・人材・徳・成長・独立独歩の5つの信念をもつジェローム・スマッカーさんによって創業された、117年の歴史を誇る古き良き企業のひとつです。この長き伝統のなかでCEOは5人だけしかいません。

55年途切れることなく配当を出しており、直近12年は連続増配中です。長期的な目標として、Net Salesは年6%、EPSは年8%の成長を掲げています。

Segmentは以下の3つ。
  • U.S. retail Coffee・・・家庭用コーヒー(シェア29%で一位)。留学中は、たいへんお世話になりました。
  • U.S.Retail Consumer Foods・・・ピーナツバターやジャム、アイスクリームのトッピング。こちらも留学中はお世話になりました。
  • International, Foodservice, and Natural Foods・・・US以外、といってもほとんどカナダ。あとナチュラルフードでは、2014年度にEnray社を買収しています。
2014年度のNet salesとProfitの割合は以下の通りです。儲けのほとんどが米国からきています。
ソースは2014年度のAnnual Report

Revenueと一株当たりの指標。ソースはモーニングスターのサイト
2014年度のRevenueの落ち込みは、主にコーヒーとピーナツバターのPricing action(たぶん値下げ)とInternational, Foodservice, and Natural Foodsセグメントでの商品の整理のインパクトです。米国でもデフレの圧力があるようですが、その一方アニュアルレポートに2014年6月に9%程度コーヒーの値上げをしたと書いてあるので、2015年度はまた伸びてくるかもしれません。

2011年度のフリーキャッシュフローの低下はコモディティ(主にコーヒーの原材料)のコスト増によるTrade receivableや在庫へのインパクトの結果のようですが、いまひとつ理解できません。一時的なので、まあ、いいや。

Cash Flowのウォーターフォール、および稼ぎ(Net cash provided by operating activities)に対する配当&自社株買いの割合、および負債の動向です。
ソースはAnnual Report

 
ソースはモーニングスターのサイト。負債の単位は$Million。
SJMも低金利にかこつけ、負債を増やしていますね。個人的には、借金を減らして、もう少し自社株買いが控えめなのが好みです。ROEをほかの食品関連の企業と比べてみると、


Kはケロッグ、GISはジェネラルミルズ。なんだよ、自社株買いが盛んな割にはROEがもうちょっと・・・て感じです。

私は1994年に米国留学を終えたのですが、なにせ田舎だったので、スタバの存在を知らずに帰国しました。私の帰国以降、シアトル系のカフェの席巻もあり、米国人のコーヒーに対する嗜好もずいぶん変わっているんじゃないかなあと推測します。

でもSJMが提供する家庭用のコーヒーは、やっぱりスタンダードな感じで各家庭のコーヒーメーカーの中で万年煮詰まり続けるのではないでしょうか。個人的な嗜好もあり、SJMは有力な獲得候補です。

米国外への進出は、ほとんど期待できないと思うので、新興国の成長を取り込むとかは望み薄です。でも最近、私は米国以外に進出=世界情勢リスクへのエクスポージャーと考え始めていて、米国でトップブランドを持っていたらそれでいいじゃんと思い始めているので、そういう意味でもSJMは悪くない。

米国の人口動態については以前書きましたが、別の切り口でまた後日レビューしてみたいと思います。

情報開示:GIS49株保有




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