2015年1月28日水曜日

ホーム・ディーポ(HD)のレビュー (2015年1月)

「ここに泊まるの?」ポールが言った。
「そうだ。あの小屋に住んで、明日から新しくもっといいのを造りはじめるんだ」
「どういう意味?」
「おれたちが家を建てるんだ。おれときみが」
「そんなこと、できないよ」
「いや、できる。おれがやり方を知っている。教えてやるよ」
「家の造り方をどうして知ってるの?」
「親父が大工だったんだ」
 彼はただぼんやりと私を見ていた。家は人が建てるものであることなど、一度として考えたことがないのだ。家は建築会社が建てるものであり、時には自然に出現するもの、と思っている。

ロバート・B・パーカー 『初秋』 菊池光・訳 ハヤカワ文庫
ボストンの私立探偵スペンサーと、その依頼人の息子、ポール・ジャコミンとのやりとり 
今回は投資方針を満たしていない、5年連続増配当中の銘柄になります。ただ2015/1/26付配信のぐっちーさんのメルマガに素直に触発され、私なりに考えた結果、3月末までの定期獲得の候補にします。有料なので、メルマガの内容は保秘。


ホーム・ディーポ(HD)は、日曜大工道具やそれに付随するサービスを扱う小売店を米国(グアムやプエルトリコなどのUSテリトリー含む)、カナダ、メキシコで展開しています。2013年度末で2,263店舗。私好みのガラパゴス in Americasな企業ですな。ユーロのすったもんだなんぞ、知ったこっちゃない。

数年前、あるプロジェクトで米国にしょっちゅう出張していたとき、泊まっていたモーテルの近くにHDの店舗がありました。ひたすら巨大な倉庫型店舗に、様々な日曜大工道具やガーデニング用具等が豪快にドカドカと置いてありました。

週末で暇なときはそこで半日くらいブラブラして過ごしました。興味は尽きないのですが、体力が尽きる。なにせ広い。とにかくでかい。どんなものを扱っているかはホームページでご確認を。

HDの典型的な店舗では、年間通じて約3万から4万点、またWebでは70万点を超える商品を扱っているとのことです。

CEO曰く、Jim Collins氏(どこのどいつやねん)のビジネスフレームワークのアイデアを拝借し、以下のとおりに3つの事柄にプライオリティを置いているようです。

  1. 何に情熱を傾ける? → カスタマーサービス
  2. 何で一番になりたい? → Product Authority (なんと訳せばいいのか、商品の優位性?)
  3. 我々を動かす原動力は? → 規律のとれた資本配分

1と2に関しては、店舗での労働時間の60%を顧客との対面に費やすことに成功しているし、そのせいか顧客満足度の調査でいい結果が出ているとのことです。

またオンラインの注文のうち、30%程度が店舗でのピックアップを希望するとのことで、それらのお客さんに対する対応もぬかりありませんぜ、としています。

この手の商品はその性質上、専門的な説明やアドバイスを受けたほうがいいもの多いでしょうし、またそのついでにいろんな商品を店舗で直接見て回る楽しみもあるでしょう。結果、オンラインと実際の店舗のうまいシナジー効果があるのかもしれません。

オンラインユーザーの満足度をあげるため、新たに3つの配送センターを立ち上げつつあるようで・・・米国内の配送希望のお客さんのオーダーのうち90%が二日以内に届くことを目標としています。

お客さんは大別して以下の3つに分類できます。
  • Do-it-yourself (DIY)・・・道具や部品、設備を買って、あとは自分で組み立てるぞというアーネスト・ヘミングウェイ(がどうだったかは知らないけど、なんとなく)な人々。ボストンの私立探偵スペンサーは、もちろんここにはいります。
  •  Do-it-for-me (DIFM)・・・この表現、初めて聞いた。道具や部品、設備を買って、なおかつ組み立て等もやってくださいというスコット・フィッツジェラルド(がどうだったかは知らないけど、なんとなく)な人々。本州横断自転車の旅(といっても日本海経由の大阪-東京間)をやりながら、じつはパンク修理が出来なかった私はここに属します。フローリング作業やキャビネット設置、はてはセントラル空調システムの設置等も行っているようです。
  • Professional・・・これは業者さんたちですね。
Revenueの推移を見てみます。
数値のソースはモーニングスターのサイト

金融危機で落ち込んだRevenue、Operating Marginが回復しつつあります。危機前のRevenueを見ると、まだまだ伸びていきそうな雰囲気ですね。手厚いカスタマーサービスと、確固たるProduct Authorityが功を奏しつつあるようです。

キャッシュフローの推移はどうでしょう。

数値のソースはモーニングスターのサイト

潤沢なフリーキャッシュフロー(FCF)。とくにここ5年間はCapexが低い。あんまりきちんと調べていませんが、新規の出店は抑制しているのかな。それとも飽和状態?

それではこの潤沢なキャッシュフロー、どのように使われているのでしょう。この観点から上記のプライオリティ3の規律のとれた資産配分ができているか見てみます。

まずCEOは、配当性向50%、毎年増配をめざし、余ったキャッシュは自社株買いに費やすと言っております。おっ、いいんじゃないですかあ。

では一株当たりの指標を見てみましょう。

数値のソースはモーニングスターのサイト

EPSの配当性向は、まだ50%以下、ということは増配余力満々か。FCFが潤沢なので、それに対する配当性向はさらに低い。にしても金融危機後のEPSの伸びが富士のすそ野のように美しすぎる・・・あやしいな。

BSをみると


在庫をのぞいた流動性資産が、流動性負債よりかなり低い。小売業界はこんなもんか、それともHDだけか。気になったのでライバルのロウズ・カンパニー(LOW)をチェック。


まあ似たような感じだから、こんなもんなのかもしれない。 

でも長期負債が増えているなあ。キャッシュフローをウォーターフォールで確認します

数値はアニュアルレポートより、項目は適当にまとめています

なんですかねえ、この2014年度の自社株買い。お金借りて自社株買いの原資にしてるぞ。アニュアルレポートにもその旨記載があった。余ったキャッシュとちゃうやんけ。規律がとれていません。

まあ、低金利やし、借りたお金で株数を減らしたほうが、長期的にみたら得なのかもしれない。そのあたりはよくわからない。美しすぎるEPSの増加の裏にはこういう動きもあるんですね。

とまあ、ちょっと突っ込みは入れてはみたものの・・・

守備範囲がAmericasというのは私好みだし、その米国の人口動態や住宅着工数のトレンド、あと米国人のわりあい多くの人が、家は住むだけのものじゃなく、自らの手で築き上げるものと考えている(留学中に、数年以上にわたって建築中の知人の手作りログハウスに泊まったこともあるし、今朝の電話会議の相手(米国人女性)は、自分たちでつくった家で、暖炉用のマキを乾かしているけど、これが数年がかりなのと話していた)ことを考慮すると、HDは有力な獲得候補です。

私も家を自身の手で造ってみたいという憧れはあるけれども、せいぜいイケアの家具組立くらいがいっぱいいっぱいかなあ。

情報開示:とくになし 

Appendix: BS上の負債の推移と、営業キャッシュフローに対する自社株買いと配当の割合の推移
数値のソースはモーニングスターのサイト
 ROEとOperating marginのLOWとの比較(数値のソースはモーニングスターのサイト






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