2016年8月20日土曜日

サプライチェーン(SCM)を制する者は

 短期決戦志向は、補給・兵站の軽視にもつながっている。これも大東亜戦争を一貫して流れる考え方であった。インパール作戦しかり、ガダルカナル島しかり。燃料、弾薬、食糧などの物的資源の補給がつねに滞りがちであったばかりでなく、パイロットや士官という人的資源も戦争中期以降は急速に不足していた。サマール湾で敵空母群を追撃した栗田艦隊があと一歩のところで追撃を中止したのも燃料不足を懸念したためといわれる。
『失敗の本質』 中公文庫
先日、月刊ロジスティックス・ビジネス誌の8月号をパラパラとめくっていたら早田虔太郎氏による『米ガ-トナー「サプライチェーンTop 25」』という記事が目に留まりました。

 米調査会社のガ-トナーは、卓越したサプライチェーンによって優れた業績を収めた会社を顕彰する「サプライチェーンTop 25」を毎年発表している。(同記事より抜粋)

のだそうです。

サプライチェーンがしっかりしている企業というのは、長期的な視野を持ってビジネスのグランドデザインが描けている、信頼がおけて持続性のある組織と言えます。

私の投資方法は、株式を獲得したらひたすらホールドして配当を得るというものなので(別の言い方をすると放出のタイミングがさっぱりわからない)、できることなら長く信頼のおける企業を見つけておきたいものです。

ということは「サプライチェーン Top 25」は、そういう企業を見つけるよいソースになりえるかもしれないですね。ちょっと覗いてみましょう。

まず選出の仕方なのですが、以下の4つのビジネスデータと有識者による評価を基にしているようです。

  • ROA(総資本利益率)
  • 在庫回転率
  • 売上高の伸び
  • CSR(企業の社会的責任)

CSRは、今年から加わった指標で、第三者機関による測定数値を利用しているそうです。

有識者による評価は、ガ-トナー社のアナリストと各国のSCM実務家を対象に行ったアンケート調査に基づいているんだとか。

評価対象は「フォーチュン・グローバル500」と「フォーブス・グローバル2000」のうちの売上高が120億ドル以上の企業、しかし金融・証券業界や航空産業は調査対象外とのこと。

では過去3年間の順位を見てみます。データのソースはガ-トナー社のサイト



2016年に限り、The 3rd Man's  Fundの組み入れ銘柄をハイライトしています。

で、2015・16年のアップル(APPL)とP&G(PG)ですが、過去10年間で7回以上Top5入りしたとのことで、サプライチェーン・マスターとして別格扱いになっており、順位に入っていません。

早田氏の記事のよると、PGは、歯ブラシや芳香剤等の一部の製品に小型センサーを埋め込み、そのデータに基づいて、デマンドのパターンを把握し、製品開発に役立てているのだそうです。で、サプライチェーンを構成するセクションは、毎日の消費量に基づいて動いているとのこと。

APPLはCSRとして、鉱物の取引がコンゴ共和国の武装勢力の資金になっていないことを証明する報告を行っているとの事例が同記事内で紹介されていました。

こうしてみると、リストの中には連続増配等の銘柄が結構入っていますね。私が数えたところ、David Fish氏によるU.S.Dividend Championsの10年以上連続増配中の銘柄が、2016年のリスト25社中に9社入っていました。PG含めると10社です。

NestleやUnileverとかも、ユーロベースでは、ひょっとしたら連増配中かもしれません。

発注から30分で輸送を目指すアマゾン(AMZN)は今年順位を落としていますが、これはCSRの評価が悪かったためです。なにやらAMZNはいまのところサプライチェーン分野では秘密主義なようで、情報・ガバナンス指標の開示の欠如が響いた模様。

AMZNはまだまだ成長過程ですからね。

ちなみに私もAMZNは私生活でちょくちょく利用しますが、あれをサービスする側にまわることを想像すると目まいがしますね。日本上陸以来、アマゾン・ジャパンは常に人を募集しているし(私の転職活動中も続々とオープンポジション情報が送られてきた、それも全部が拡張・新規ポジションというわけではなさそう)、私は何人かアマゾンでの経験がある人を知っているのですが・・・みなそこでの経歴が一年未満・・・で、いい経験にはなったと言ってますが、詳細はあんまり語りたがらない。

人材エージェントのかたも、口をそろえて・・・いや、これ以上はよそう。

それはさておき、長期的に株式銘柄をHoldするような投資方法をとるのであれば、退屈な製品を扱っていて、なおかつSCMもしっかりしているような銘柄を選ぶというのも一つの手かと思います。

この地味な分野をしっかり押さえているということは、ビジネスのグランドデザインがきちんと描けていることの証です。銘柄選択で迷ったらガ-トナー社のリストを参考にするのもいいかもしれません。

にしても、日本企業が2015年のトヨタだけというのも寂しいですね。自動車メーカーだとほかにはBMWしか見当たらないから、さすがトヨタというべきか。

H&Mやサムソン、キャタピラー(CAT)もランクインしているくらいだから、ユニクロやソニー、コマツとかも頑張ってほしいですね。でないと、日本人は「失敗の本質」を掴めていないとのそしりを受けることになります。うーん。

情報開示:この記事を書いている時点でPG83株保有


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