2024年5月17日金曜日

カジノにおける長期投資Big Shotsの動向 -2024年Q1-

And you wanna be a big shot
You wanna be the big man
You wanna hold a big gun
You gotta have a quick hand
You wanna be the big shot now
The chosen one your mother loved the most
After all

The Lumineers『BIG SHOT』

各大物ファンドマネジャー(Big Shot)の2024年のQ1の株式ポートフォリオが公開されました。たてまえは余興、実は虎視眈々と投資先の開拓を狙って、比較的に厳選・長期株式投資を行っているんじゃないかなあと思われるBig Shotsの動向をチェックしてみたいと思います。

そのまえに・・・ほかの人々の株式ポートフォリオは決して冷やかしで覗いてはいけません。そこに至るまでの苦難に満ちた道程に敬意を表さなければなりません。各ファンドマネジャー、および個々人にとって、出来上がったポートフォリオは、

The only son we love, after all...

のようなものなのです。

まずはThe Lumineersの涙なしでは聴けない名曲で心を律し、姿勢を整えましょう。


2024年5月2日木曜日

Next 10 years 第二部 -  敗者のゲーム -

 

僕はそれなりに年を取ったのだし、時間は取り分を取っていく。誰のせいでもない。それがゲームのルールなのだ。

村上春樹 『走ることについて語るときに僕の語ること』 文藝春秋

 

You just keep doing it.  And that's what investing is.

- Jason Karp 

William Green 『RICHER, WISER, HAPPIER』 SCRIBNER


第一部より続く。

私生活では、ムスメが小4、ムスコが保育園の最終年になりました。教育以外はだいぶん手がかからなくなりつつあるのですが、ムスメが思春期に突入するまでの束の間の小休止といったところでしょうか。

昨年度は、ムスメは週の半分は友人たちと家や公園で遊び、残り半分は一人で絵をかいたり工作をしたりして、バランスよく時間を配分していました。今年度になって中学受験を意識した塾に通い出し、友人たちも同じくいろいろ習い事があるようで、以前のように一緒に遊ぶことが難しくなっているようです。

ムスコはビビりな性格で、いまだに鉄棒や雲梯に近寄ろうとせず(姉と大違いである)、トモダチや保育士さんたちには雄弁に危険生物をやっつける方法のウンチクを語るのですが、いざ動物園で猛獣類のオリの前に来ると、真顔になってそそくさと駆け抜けて安全域を確保します。ただ自転車は頑張ってトライしていて、残る課題は漕ぎ出しとブレーキだけです。これが終われば、私も体力的に楽になるので、あとひと踏ん張り。



2024年5月1日水曜日

Next 10 years 第一部 -  定雲止水のPortfolio -

 

 本来的な意味での株式投資とは、持続的な価値を創造することができる企業を見極め、お金を預けることで、自らの代わりに継続的に価値を増やしてもらうという資本家・オーナーとしての発想であり、この発想は資本主義の根幹を成すものです。

川北英隆/奥野一成 編集 『いま日本を代表する経営者が考えていること』 ダイヤモンド社

 

We buy never to sell.

Pulak Prasad 『What I Learned About Investing From Darwin』Columbia Business School Publishing


The 3rd Man's  FundのInceptionから、この4月末で丸10年を迎えました。『次の10年に向けての雑文(1) ーカタリストとしての株式投資ーで書いた通り、今後は5月をThe 3rd Man's  Fundの年度の始まりとします。

では、新たなシーズンの始まりにあたり、現時点での立ち位置を確認します。

まずはCode of Conduct。昨年末に完成し、一月より試運転。プレ・シーズン中に若干のストライクゾーンの修正(あと、ROCEが左→右で大きくなるようグラフを作図し直した)を行いましたが、今後はこれで行きます。

当ブログを始めた2014年のころは、ろくに財務諸表、アニュアルレポート、有価証券報告書等々の読み方すらわかっていませんでした。営業利益と純利益の違いも分かっていなかったですね。おまけに当時は先の金融危機(リーマン・ブラザーズがあおりをくって破綻したやつ)の記憶が生々しく残っていたこともあり、ひたすら連続増配、ならびに生活必需を中心とした株価的にディフェンシブ(私の体験では、中で働いている人は必要以上にオフェンシブ)と言われる銘柄を追いかけていました。

いまでは一次資料を読んで、自分なりの解釈・判断を下せるようになっています・・・正しいかどうかは別として。そして、それらから読み取る「各企業が世に提供する価値」を見極めて投資することに意義を感じるスタイルに変わっています。価値(勝ち)続けるであろう企業だけを厳選し、いつまでもその株式を保有し続けて、オーナーとしてのステータスをゆったりと味わいたい。

売却して利益を得るために株式を購入するのではなく、保有するために購入するのです。

もちろん投資ですので、私が投下した資本が回収できるかどうかについても冷徹に目を配っていることは言うまでもありません。自分の判断の誤りに気付いたら、躊躇なくその株式を手放します。きっとそのようなケースも、今後いくつか出てくるでしょう。未来は本質的に不確実ですが、一つだけ確実に言えるのは、「私は間違い続ける」ということです。

それを踏まえたうえで、新規であれ追加であれ株式を獲得する場合は、

2024年3月18日月曜日

スパイスのない人生なんて 9 - MKCとLSTR-


My planet, Arrakis, is so beautiful when the sun is low. Rolling over the sands… you can see spice in the air.

映画『Dune』


フランク・ハーバート原作の『Dune』は壮大な叙事詩であり、SiFi(アメリカ人はエス・エフではなくサイ・ファイと言います)の金字塔です。息子のブライアン・ハーバートによると、アイザック・アシモフ、アーサー・C・クラーク、ロバート・A・ハインライン、レイ・ブラッドベリ等々によるハードカバー版SF作品が全米ベストセラーに名を連ねるようになったのは、〈Dune〉シリーズが大成功を収めたのちのことなんだそうです。(『砂漠の砂丘たち〔新訳版〕』酒井昭伸・訳 ハヤカワ文庫 序文より)

つまり『Dune』がSiFiを文学的にまともなジャンルのひとつにした、といっても過言ではないですね。それまでは一部の物好きによって廉価ペーパーバックが読み捨てられるGeekな娯楽とみなされていたんでしょう。

その壮大な物語は、砂の惑星アラキスでとれる特殊なスパイスを巡る骨肉の闘争記、とも言えます。人類にとってスパイスとは、はるか未来の宇宙の彼方にまで大きな影響を及ぼす存在なのです。ま、『Dune』の場合、スパイスというよりはドラッグといったほうがいい感じがしますが・・・

2024年3月15日金曜日

2月後半の振り返り

保有している米国株式のうちの3社から、2月後半に第四四半期および2023年度の決算が発表されました。すべて米国の住宅関連になります。 

ご存じの通り米国での住宅ローン金利は高止まりしていて、とくに中古住宅の需給はよろしくありません。中古住宅販売件数は先の金融危機時(リーマンブラザーズが破綻したやつです)の大底レベルに近い水準とのことで、これからレビューする3社にとっては逆風が吹いています。

2024年3月5日火曜日

カジノにおける長期投資Big Shotsの動向 -2023年Q4-

Though the stock market is massively larger than it was in our early years, today’s active participants are neither more emotionally stable nor better taught than when I was in school. For whatever reasons, markets now exhibit far more casino-like behavior than they did when I was young. The casino now resides in many homes and daily tempts the occupants.

SHAREHOLDER LETTES 2023, BERKSHIRE HATHAWAY INC.


Listen to me very carefully.  There are three ways of doing things around here.  The right way, the wrong way, and the way I do it.  You understand?

映画『カジノ』、ロバート・デ・ニーロ演じるSam 'ACE' Rothsteinのセリフ


最近発行されたバークシャー・ハサウェイの2023年度版のレターを読んでいたら、映画『カジノ』を観たくなりました。私はとくに『グッドフェローズ』に代表されるスコセッシ監督の映画のグダグダ感が大好きで、そういった意味で『カジノ』も興味津々だったのですが、日本で公開されたのが私が社会人になったばかりの1995年。金銭的にも精神的にも劇場に足を運ぶ余裕がなく、そのまますっかり観そびれていました。

2024年2月19日月曜日

2月前半の振り返りとストライクゾーンの修正

保有している米国株式のうちの4社から今月前半に第四四半期および2023年度の決算が発表されました。すこし振り返っておきます。が・・・ 

その前に『打率8割の投資家の勝率』でTypeIエラーを減らせ!と書いたばかりにもかかわらず、一部ストライクゾーンでバットを振ってもいいエリアを上方に修正しましたので報告しておきます。舌の根も乾かないうちに・・・というのは私の得意技。 

詳しくは投資方針のページに記載していますが、右打者であると仮定すると、内角高めにヒッティングエリアを拡大しています。内角は過去10年間のROCEの中央値が35以上であり、さすがにこのあたりの数字をたたき出している企業の株式のPERは過去をさかのぼって調べても常に高いので、エリアを高めに修正しています。

ROCEの35以上の企業ってのは大抵の場合、バフェット氏が言うところの「島に一つだけかかる橋を所有しているような事業」を行っており、なおかつ投資対象企業はDebt/Equityが0.3以下に絞っているので、獲得時のPERが高くても致命的なリスクは避けられるだろうという判断です。

2024年2月16日金曜日

打率8割の投資家の勝率

  マーケットで生き残ることは、戦場で生き残ることと本質的に同じことだ。できるだけ損失を出さないようにして生き残ることさえできれば、結果的にいくらかの財産ができているものさ

by ウォルター・シュロス、Roald W.Chan 『価値の探究者たち』 山本御稔・小林真知子・訳 きんざい

 

進化のカジノで使われる通貨は生存である。

リチャード・ドーキンス 『利己的な遺伝子』 日高敏隆・岸由二・羽田節子・垂水雄二・訳 紀伊國屋書店


私にとって投資関連のザ・マスターピースと言える本、インド株式を運用するNalanda Capitalの創始者Pulak Prasad氏(以下敬意をこめて師匠Pと呼ぶ)による『WHAT I LEARNED ABOUT INVESTING FROM DARWIN』は3つのセクションで構成されていますが、それぞれに


  1. Avoid big risks.  
  2. Buy high quality at a fair price
  3. Don't be lazy - be very lazy 


とタイトルがつけられてあるように、まずは(損をする)リスクを最小限にとどめることに重きが置かれています。しかし人間、いやもとっと範囲を広げると、生きとし生けるものすべてが、リスクを広げてしまうエラーを犯す存在でもあります。

2024年2月2日金曜日

1月の振り返り

Struck me kinda funny
Seemed kinda funny sir to me
Still at the end of every hard day
People find some reason to believe

Bruce Springsteen 『Reason to Believe』

保有している米国株式の第四四半期および2023年度の決算が発表され始めました。まずは数字だけで軽くフォローしてみます。

2024年1月20日土曜日

次の10年に向けてのプレ・シーズン

The big money is not in the buying and selling...but in the waiting.

Charlie Munger

次の10年に向けての雑文(1) ーカタリストとしての株式投資ー』で書いた通り、今後は5月をThe 3rd Man's  Fundの年度の始まりとします。ということは2月~4月は第四四半期になりますが、ファンドのInceptionからこの4月末で丸10年を迎えるので、5月からは投資活動における新たなシーズンが開幕という気分になっており、それまではプレ・シーズンで慣らし運転期間と位置づけたいと考えています。新たに投資方針も策定したこともあるので、これで本当に違和感がないかを確認することになりますね。 

といっても現状の株式市場の相場水準を鑑みると、ほとんどアクションを起こす機会はなさそうです。逆に、機会を待ち続けることに自身をどう慣らせるか・・・が焦点です。