2015年2月27日金曜日

ウォルマート(WMT)の増配 / 櫂を握るアメリカ人

Are you going to Scarborough Fair?
Parsley, sage, rosemary and thyme,
Remember me to one who lives there, 
For she once was a true love of mine.

『Scarborough Fair』 played by Simon & Garfunkel

ウォルマート(WMT)が増配です。これで42年連続です。

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WMTに関してはジェレミー・シーゲル氏の『株式投資の未来』(瑞穂のり子・訳、日経BP)の第8章で面白い記述があります。
″ 世界最大の小売会社創始者を、そうまで魅了した百貨店チェーンとは、どこだったのだろう? Kマートだ。ウォルトンのKマートへの惚れ込みぶりは、自分の店の名前をウォルマートに変えたほどだった。
アーカンソー州で雑貨屋を営んでいたWMT創設者のサム・ウォルトン氏は、どうやらKマートの前を素通りできない人物だったらしいですね。どこにでかけてもKマートの店舗を見かけると、その中に入って品ぞろえや陳列の配置に刺激を受けながら、あれやこれやと自身のお店のあるべき未来の姿を妄想(あえて妄想と言わせてもらう)していたんでしょう。

きっと楽しかったに違いない。とても充実したひと時だったことだろう。

もちろんサムはKマートで働く女性従業員に恋していたわけではありません。Kマートそのものが彼のa true love of mineだったのです。たぶん。

時は流れ、Kマートは姿を消し、ウォルマートは世界のそこかしこで資本主義の果実を人々に提供し続けています。アマゾンのようなオンラインストアの台頭もありますが、実際に果物なり野菜なりを手に取り物色するという愉しみを人々が失わない限り、ウォルマートは姿を消さないでしょう。パセリ・セージ・ローズマリー・エンド・ターイム・・・

で、その増配率ですが・・・2.1%・・・2年連続で2%台。ボール3つぶん、低い。

ウォル(以下呼び捨て)、あのねえ、もうちょっと何とかならんのかね。キミはどっかの島国の企業じゃないんだから。ちょっとキャッシュフローのウォーターフォールチャートを見てみよう。
数値のソースはニュースリリースより
15年度の配当はもうちょっと高くてよかったんじゃねえの、結果論だけど。16年度はね・・・なんとケチで名高いウォルのやつ、従業員の待遇改善を考えやがったみたいだぜ。

ウォルのニュースリリースの内容をまとめると:
  • 米国の500,000人のフル/パートタイムの従業員の賃金を2016年2月までに最低$10の時間給に引き上げる。
  • オペレーションのストラクチャー変更で、従業員と上長のコミュニケーション向上を図る。
  • ウォル、およびウォルマートファウンデーションは、小売業で働く人々(WMTに限らず)のレベルアップ向上につとめる。これに充てる金額は5年間で$100M。
  • 従業員のキャリアアップのための新たなトレーニングプログラムを導入する。また従業員の教育(高校卒業やカレッジの単位取得)をバックアップする。
等々です。

やるじゃん、ウォルくん(少し格上げ)。

これらをすることにより2016年度は一株当たり$0.26~$0.29のコスト負担が見込まれていて、増配率が少なくなるのもやむを得ないかな。

でもまあ、これは米国経済の好調さを表しているとも言えるし、いいんじゃないですかあ。バズーカ担いだ黒田さんじゃないけど、賃金が上がらんことには景気も持続しないしなあ。

ただまあ、米国の景気なんですが、ちょっと面白い記事を見つけました。米国人の3人に1人は破産の危機というWSJの記事によりますと、“バンクレート・ドットコムの調査で、緊急事態用の預金がクレジットカード負債を上回っている米国人の割合は58%に過ぎない”とのことです。

このバンクレート・ドットコムの調査の信頼度はどれほどなのかはわかりませんが、もしそうだとすると今の米国の景気は個人のレバレッジの上で成り立っていますね。先の金融危機からまだ10年もたっていませんが、いやはや、素晴らしい。それでこそ開拓民の国、移民の国、そして資本主義の国です。

そういえば80年代後半頃に読んだ記事で、ある日本人ビジネスマンが米国民の懐具合を探るためにATM周辺に捨てられてある残高が記載されている紙を拾いまくって調査(!!!)していたら、その残高の低さにびっくりしたということが書かれていました。

昔から米国民はそうだったんです。私はその特捜最前線みたいな日本人ビジネスマンにびっくりしましたが。

まあね、金融危機くらいで懲りている場合じゃありません。ボートは漕ぎつづけねばならないのです。偉大なるギャッツビーの物語を生み出した国に住む人々としての宿命です。

このたくましさと米国の人口動態をみれば、まあ米国企業に投資して間違いないんじゃないですか。いざ、具合が悪くなったら? そうなれば人々はeveryday low priceのウォルくんのお店に足しげく通うだろうし、こだわりをすててマクド(MCD)でバーガーを頬張るだろうし、スタバをやめておうちでJMスマッカー(SJM)のコーヒーを飲むことでしょう。

情報開示:この記事を書いている時点でWMT140株、MCD33株保有


Appendix

数値のソースはニュースリリースより

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