2015年8月23日日曜日

制空権を確保せよ - ユナイテッド・テクノロジーズ (UTX) -

空爆が万能薬だとする信念において、ロストウより熱狂的だったのは空軍のみであった。ハノイとの全面的な対決を躊躇するものが多い中で、ロストウは、対決恐るに足らずとの信念を貫いた。われわれには空爆能力があるという安心感がそうさせたのである。一九六七年までに、空爆の効果を否定する証拠が山と積まれていたのにもかかわらず、彼の信念は揺るがなかった。
D・ハルバースタム 『ベスト&ブライテスト 上』 浅野 輔・訳 二宮社
ウォルト・ロストウ氏に限らず、歴史的に米国の空爆や制空権に対する信頼は強いものがありますね。なにやら米国には制空権で優位でない状況下では戦わないというドクトリンがあるようで、そのせいで米軍の地対空戦車は、たとえばドイツや日本の自衛隊のそれと比較して、あんまり発展していないようです。

で、その米国の制空権確保に一役買っていると思われるユナイテッド・テクノロジーズ(UTX)、最近のオイル価格の、あるいは新興国経済の乱気流に巻き込まれてか、株価が低空飛行で、配当率からみてもThe 3rd Man's Fundのそんなに長くない射程圏内に入ってきました。

UTXは22年連続増配中で、全世界で211,000人の従業員を擁するコングロマリットです。

アニュアルレポートによると、同社は以下の五つのセグメントに分かれています。

  • Otis
  • UTC Climate
  • Controls & Security
  • Pratt & Whitney
  • UTC Aerospace Systems and Sikorsky

ただしこれらは大きく3つに大別できます(日本語訳には自信なし)。

商業・工業施設の建設・建築分野

上記の最初の3つのセグメントはこれですね。エレベーターのOtisは知っています。あとは空調や火災を含むセキュリティ、冷蔵等のシステムもやっています。世界的な都市化やミドルクラスの増加の恩恵を受けるとしており、2014年度版アニュアルレポートでは、2020年末までにマーケットサイズは30%以上増えるだろうとしています。直近では考えを変えてるかも知らんけど…。

商業用航空宇宙産業

Pratt & WhitneyとUTC Aerospace Systemsがここにあてはまります。Geared Turbofan (GTF)テクノロジーをひっさげて成長著しいナローボディー機(客室に通路が一本しかない飛行機、プライベート機みたいなやつ?)のエンジンのシェアを伸ばしているようです。商業用大型機(おそらく旅客機)でも新型PW800エンジンでシェアを拡大したようです。

50種以上のエンジンのほかに、エアロスペース・システム・エンターリング・サービス(???、航空運営システム?)を提供しています。

軍事用航空宇宙産業

Pratt & WhitneyとSikorsky(8/23追記、読者の方から指摘あり、どうやら軍事用ヘリコプターはロッキードマーチンに売却されるみたいです。)

前者はF-35Bのエンジン(私は、戦車と違い戦闘機の知識は乏しい・・・)。

後者は軍事用ヘリコプター・・・私がいろいろ書くよりも、映画『地獄の黙示録』のプレビューで、どんなヘリコプターかをご確認ください。若かりし頃のハリソン・フォードもさりげなく出演しています。なおこの映画をエアコンなしで汗かきまくりながら見るというのは、夏のおすすめ行事の一つです。This is the end, my friend...

上記3カテゴリーのNet salesの割合、および地域別の割合は:


2014年度版アニュアルレポートより抜粋

USとOUSでおおよそ40:60、世界全体をまんべんなくカバーしています。地獄の黙示録方面は約20%ですね。(さらに追記、軍用ヘリは無くなる予定)

Revenueの推移。



サブプライムクライシス以降、順調に回復中。Operating Marginがここのところ良いですねえ。Industrialsの老舗のいぶし銀の技ですね。

一株当たりの数字。




フリーキャッシュフローは比較的安定してGenerateされています。2012、13年度はCapexが増えていてちょっと気になったのですが、ムスメにミルクを与えねばならなかったので、調べるのを割愛しました。なんだろう、なんか買収したのかな。ま、いいや。

配当性向の推移。




うーむ、意外と低め。ということは増配余地はまだまだあるかな。
(上記三つのグラフの元ネタはモーニングスターのサイト)。

キャッシュフローをウォーターフォールで見ると、


数値のソースは204年度アニュアルレポート、項目は適当にまとめています
いやはや、手堅いところ。これをみるかぎり信頼感ばっちし。

UTXはどれほど競合他社に対し強いのかはわかりませんが、その手掛けている分野を見るにつけ、そうおいそれと黄昏ていくのは考えにくいかなあと思います。

9月の定期獲得の有力候補ですね。最近の株価の動向を見るにつけ、9月末までにUTXがThe 3rd Man's Fundの射程距離圏外に脱出は考えにくいので、まああわてず騒がず。

情報開示:とくになし

Appendix


数値は2014年度アニュアルレポートより、項目は適当にまとめています


2 件のコメント:

  1. こんにちは。娘さんの育児でたいへんななか記事アップありがとうございます。
    軍用ヘリのSikorskyはロッキードマーチンに売却のようです。

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  2. FDG金星人さん、情報ありがとうございます!  記事にすこし手を入れました。今後ともよろしくお願いします。

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