2017年5月7日日曜日

おい、ブルペンで誰か投げているか? ー 日本株式の担い手 ー

 誤解のないよう断っておくが、インデックス運用を株式投資のコアにするべきとの考えに変わりはない。
ジェレミー・シーゲル『株式投資の未来』瑞穂のりこ・訳 日経BP
けっこう誤解されてますぜ、ジェレミーくん。曲解されているといってもいい(参考記事:『株式投資に未来はあるのか』)。もうちょっと念を押しとくんだったね。まあ、どんなに念押ししても、人は解釈したいようにしか読まないですが。

いっそのことプロレスラーみたいに日本ではキャラクターを変えて売り出してみたらどうだろう、たとえば個別銘柄投資の権化として。「千の株を持つ男」とかいいんじゃないか、ミル・マスカラスみたいで。なーに正体がばれそうになったら、いや実はオレが持っているのはウィルシャー5000の1/5株だ、とか言って胡麻化せばいい。

そのシーゲル氏も推奨するインデックス運用、私もムスメの教育資金の準備や確定拠出年金ではコアに位置付けています(参考記事『2015年NISA枠の使い道と投資信託の変更』、『非日常と現実との岸辺で - BOSEの獲得 -』)。

それに私は、インデックス運用が多くの人々にとって最適な投資方法だと思います。とくに投資信託を利用する場合は、多種多様なアセットクラスに比較的少額から定期的にEveryday Low Price Costで投資することが可能で、資本主義がもたらす恩恵を享受できます。

なにより
1時間あればインデックスファンドをうまく使った投資計画をつくり、投資後は何十年もほおっておける
ジェレミー・ミラー 『バフェット 伝説の投資教室』渡部典子・訳 日本経済新聞出版社
ということで、昨今話題の生産性という意味合いでも、ぴったり合致しております。

ただし私はタダシイ投資方法だとは言わないけど。

なにせこの世の中、タダシイことを言っていいのは、算数の先生とソートー閣下、キョーソ様にショーグン様、マイク・ハマーに、あとはA新聞だけです。これらの方々以外にタダシイことを言っている人がいたら、ちょいと腕まくりをしましょう。

話題がそれた。

私の理解ではインデックス運用の効果が有効に発揮される根拠とは以下の通りです。

  • (株式)市場は効率的である。なぜならば数多くの研究熱心な、十分なスキルを持った投資家が、利用可能な情報をほぼ同等に手に入れ、自由に売ったり買ったり、ときには空売りしたりできるから。
  • かかる状況下では、価格と本質的価値の間にズレが生じてもすぐに解消される。となれば、市場価格は常に正しいとまでは言えないまでも、おおむねReasonableな値を保つ。
  • そうやって個別銘柄につけられた株価を時価総額比率で加重平均し指数化された値は、資本主義の日々の発展を比較的公正に反映していることになる。

なので、その指数化された値に連動する投資信託やETFを購入すれば、資本主義がもたらす恩恵をうけて、長期的にはインフレによる資産の目減りを防ぐことができそうです。

おまけに前述したとおり、銘柄選択等に頭を悩ませることもなければ、株券が紙くずになり財産を失うこともなく、さらには多くの場合、アクティブファンドや個別銘柄投資よりも良い結果を得られたりします。

これは株式だけでなく、他のアセットクラスにも言えるかもしれません。

ただし、ただしである。

インデックス運用が功を奏するには、その市場が効率的でなければなりません。市場が効率的であるというのがインデックス運用を行うにあたっての前提条件です。

インチキが横行したり、参加者が極端に偏っていたり、折り目正しきダークスーツにレジメンタルタイな方々がしょっちゅう介入したりして効率的市場仮説が成り立たない、つまり前提条件が整っていない市場については、インデックス運用はそれほど快適な方法ではないでしょう。

☆☆☆

最近まで日本経済新聞夕刊に、ニッセイ基礎研究チーフ株式ストラテジストである井出慎吾氏が、『なるほど投資講座』にて日銀のETF購入についての解説記事を連載されていました。以下茶色の文字の部分でまとめてみます(間違っている可能性があるので、原文を確認されたし。)

【ねらい】

  • 政府・日銀は物価上昇率2%の達成を目標にしている。
  • 日銀のETF買いは、この目標達成のための金融政策の一環、なぜならば
  • 株価が上がると企業の調達額が増える。
  • その調達資金が設備投資等にまわるとGDP成長率が高まる。
  • 株価も堅調になり、景気も拡大し、結果物価が上昇する。


【特異な点】

  • 中央銀行が市場から株やETFを買い入れるのは世界的に初。
  • 16年末時点ではETFの約7割を日銀が保有。


考えられる弊害


  • 個別企業の経営内容とは関係なく買いを入れるので、企業実態が株価に正しく反映されない恐れあり=「株価がゆがむ」。
  • 企業と投資家双方の緊張感が薄れる(モラルハザード)。
  • 市場に流通する株式が少ない品薄株ほど割高になる。
  • ゆがみは日経平均を2,000円から3,000円程度かさ上げしているとの試算もある。
  • これが本当なら日銀がETF買いを停止したとたん日経平均が急落するリスクがある。
  • 2016年7月29日にETF購入規模を年間6兆円に倍増すると発表したため、ゆがみが拡大。


【日銀がとった対応】


  • 2016年9月からTOPIX型のETFの買い入れ割合を7割に増やした(それまでは日経平均型と半々)。井出氏によるとゆがみ解消に一定の効果はあった。
  • 日銀は物価上昇の目的達成まで現行の金融緩和処置を続けるとのコミットメント。歪み解消はまだまだ先。


【さてどうなる】


  • 永続できる政策ではない、なのでいずれ出口戦略を取らざるを得ない。
  • これが現実味を帯びると、先回りして株式を売る動きが広がる可能性あり。
  • 企業実績や景気動向にかかわらず、大きく株価が下がる可能性あり、とくに歪みが大きい銘柄は。
  • 景気が上向いていてスムースな着陸ができればいいが、物理的な限界や上記弊害拡大で政策が続けられなくなる懸念が高い。

うーん、The 3rd Man's  Fundも東証一部上場の銘柄を複数持っていますが、あんまりいい気持ちはしませんね。

☆☆☆

最近積み立てNISAを中心に金融庁が森長官を筆頭にかなり熱が入っているようです。なんとかして投資に対するハードルを下げようとの姿勢が伝わってきます。一般の方々に寄り添って純粋に投資を拡大させていきたいと考えているように見受けられます。素晴らしい。

ここからは私のうがった見方です。

金融庁が動かしているのは危機感で、その危機感というのは株式を買い支える人材不足が、物流業界の直面しているそれよりも、相当深刻だからではないか(参考記事『株式投資に未来はあるのか - 日本 -』)。

現在の日本株式の買いは、かなりの部分を日銀が支えている状況です。しかし日銀は本来であれば、コーチャーズボックスの中に立って、ベンチの意向をソンタクしながら手をぐるぐる回したり(まわれ、まわれー!刷れ、刷れ-!)、両手を広げてストーップとかやるのが役割です(冗談です、スミマセン)。決してマウンドに立つ選手ではありません。

日銀は、そういう役割の選手が無理して7回の裏のピンチで中継ぎで緊急登板をしているような格好です。このピンチをうまく切り抜けられるどころか、逆にランナーを溜め込んで降板なんてことになりかねません。

本来であればもっと一般の多岐にわたる個人投資家がマウンドにたって投げるのが望ましいところです。でもブルペンで個人投資家の方はどれくらいあったまっているでしょう。

悪い方向に行けば、それこそビッグイニングを提供してしまします。提供しちまったが最後、誰も登板したがらないのは歴史が証明しています。

というわけで、インデックス運用をしている人も、これからやろうと考えている人も、長期で放りっぱなしにするのであれば、投資しようとする市場がどれくらい効率的なのかを重視してエクスポージャーを決めたほうがいいかもしれません。

ちなみに日本株式市場がゆがんでいるのであれば、国債の市場はどうかと言いますと…

2017年5月3日の日本経済新聞の朝刊に『国債市場 仮死状態に 1日半、10年債値つかず』なる記事がありました。日銀による大量の国債買い入れが一因なのだとか。

なんだかなあ。

情報開示:特になし


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